

















新築マンションの入居に合わせて部分的なリフォームを施した実例です。
LDKと隣接する洋室の間仕切り壁を撤去し別注3枚引戸を設置したメイン工事のほか、調光式のダウンライトやエコカラットを使ったアクセント壁を追加して、お客さまの生活スタイルにしっくりくる使い勝手の良いLDKに生まれ変わりました。

マンションリフォームのポイントとなったオーダー製作の白いガラス引戸
特定の部分だけのリフォームやデザイン性にこだわったオーダー家具に集中できるのは、機能や設備について不満のない新築購入+部分リフォームという選択をしたお客さまならではのメリットだと思います。
こちらの実例紹介では具体的なリフォーム事例を通して、どんなお悩みをどうやって解決したのか?や、どんなご要望をどんなカタチで実現したのか?という点をプロセスも含めて出来るだけわかりやすく説明していこう!という趣旨でご紹介しています。
そして、結果的にいくらかかったの?というお金の話までお伝えできればいいなと思っています。

今回のお客さまのご相談は次のようなお悩み&ご要望でした。
1.LDKと洋室をつなげて一室にしたい
2.収納を増設したい
3.照明をダウンライト&調光スイッチに取り替えたい
4.壁のアクセントにエコカラットを使いたい
新築マンションに部分的なリフォームを施したいということでしたので詳しくお話をうかがったところ、どうやら新築マンションのデベロッパーのオプション工事の御見積がとても高かったらしく、ご自身でリフォーム会社を探していたんだそうです。
オプション工事なら本体工事の工期の中で希望の追加工事を施してもらえるので、引き渡し時に工事が完了しているというメリットがあります。また、他の住戸と共に工事を進行できるため、大手ゼネコンの管理のもと、比較的安価で工事してもらえるという点で考えれば、個人的にはかなりお得な項目もあるんじゃないかと思います。
ただ、オプション工事といっても新築マンションの場合はデザインが画一的ですし、基本的にはメーカーの規格品から選定するという内容が一般的です。そのためオリジナルのデザインや難しいリクエストをすると、金額が高くなるどころか工事してもらえないケースもあるんです。
今回のお客さまの場合は、オプション工事で見積の依頼をしたものの、金額が高く提案内容もあまり満足できる内容ではなかったということで、ご自身で探すことになったようです。
1.LDKと洋室をつなげて一室にしたい
元の間取りでは、LDKの隣に間仕切り壁で仕切られた洋室があったのですが、この壁を壊して一つの空間として利用したい、というご要望です。
こちらは元の間取り。

LDKと隣接する洋室をつなげて増床するマンションリフォームのプラン
洋室のスペースは寝室として利用するつもりなので、ACのことを考えるとなんとなく仕切れる扉はつけたいが、普段は開けたままにして部屋を広く使いたいということでした。
当初の相談相手であるデベロッパー側の提案は、壁を撤去して3枚引戸を設置するという案です。この案には特に不満はなかったようですが、問題は扉のデザインの方。
メーカーの規格品からの選定だとどうしても納得のいくモノが見つからなかったんだそうです。もちろん、内容と価格については総合的なバランスが求められるため、一度冷静に検討はしてみたそうですが、「トータルでもっと良い解決策があるのでは?」という考えになったようでした。
ここまでのお話をおうかがいして私からは、
「扉はオーダー品で製作してはいかがでしょうか?」
というご提案をしました。
理由は次の通りです。
・部分リフォームならオーダー製作しても予算内におさえられると考えた為(金額は後述)
・オーダー品にすれば制限なくデザインできる為
・引戸の場合、オーダーなら床のレールを目立たなくする方法がある為(詳細は後述)
「既製品の場合とオーダー品の場合の御見積書を2つ作成しますので、どちらが良いか総合的に比較してみてください。」
ということで後日御見積書をお渡ししました。
オーダー品と既製品でどのくらい金額に差が出るかと言いますと、およそ3倍くらいです。
具体的には既製品だと15万円くらいで、オーダー品だと45万円くらいになります。今回の場合は既製品といってもサイズオーダーをしているので、いわゆるセミオーダーという部類に入ります。
一週間ほど検討していただき、部分リフォーム全体費用が想定していた予算におさまりそうでしたので、オーダー品の建具を製作する方向でお話を進めさせていただく事になりました。
先ほどオーダー品の場合は商品自体に3倍ほどの金額差があるとお話しましたが、オーダー品は費用以外にも製作の過程でお客さまの労力と時間に負担がかかります。
素材の選定、部材の寸法などの検証には正解がないため、これで良いかどうかの判断が難しいんです。そのため、悩みだすとかなりの時間がかかりますし、精神的なストレスを感じる方もいらっしゃいます。
日中のお仕事が忙しい方などは、かなりの負担になるかもしれません。。。
そこで、大切になってくるのがお客さまとのイメージの共有です。
お客さまが思い描いているデザインに相違ないかどうか、常にこの確認をしながら迅速にデザインを確定し製作を進めていくことがオーダー品のもっとも重要かつ難しいポイントでもあります。
「せっかく作ったのに、思ったより仕上がりが良くなかった」
とならないよう、私の場合はCGパースを積極的に活用しています。CGパースなら図面だけではわかりにくい点もカバーできますし、感覚的な判断がしやすいため、今回のオーダー品のケースでもCGパースで作成したイメージを確認していただきながら進めていきました。
今回作成したCGパースです。

マンションLDKと洋室をつなげるリフォームのイメージパース
図面をみるよりも雰囲気が分かりやすいですよね。
解放感のある扉をご希望されていましたのでデザイン格子のガラス框戸を製作することにしました。
色は既存建具に合わせる方向で決まっていましたので、上下左右の太い枠の部分はメラミン化粧板の近似色、枠も近似色のダイノックシートを選定し、中格子のデザインとガラス素材の選定に入ります。
検証中の格子のピッチを確認したりガラスの組み合わせを検証したりするのには、先ほどのCGパースが便利です。シミュレーションしながら少しずつデザインを進め、最終的には透明のガラスとストライプ柄のモールガラスの2種類を使用しました。

型板ガラスを使ったガラス格子の装飾が施されたオーダー引戸
モールガラスとはストライプのラインが入っている輸入ガラスです。アンティークの家具にもよく使われていおり、家具に使用するとレトロで味のある雰囲気になります。
このストライプの幅には色んなピッチがあります。ピッチによってガラスを通した向こう側の見え方が異なるため、部屋の間仕切り戸として利用する場合、この見え方は結構重要になりますよね。
見え方がどう違うのか?については、メーカーから取り寄せた実物のサンプルで確認していきます。
素材を選定し、サンプルを確認、そしてCGパースで検証。
しっくりくるデザインになるまでこれを繰り返し、ようやく納得のいくカタチが決定するという感じです。オーダー品はこういったプロセスを経て完成していきます。
そしてこの作業の元になるのは、お客様の最初のイメージです。雑誌やインターネットで好きなデザインの写真を探していただくのですが、今回はピンタレストを利用してお客さまの好きなデザインをいくつか選んでいただきました。
ピンタレストはイメージ収集にとても便利なツールです。例えば今回の例だと、検索窓に「ガラスの扉」と入れて検索するとWEB上のガラスの扉の写真をどんどんピックアップ出来るようになっています。これらの写真はカテゴリーを作って保存することもできるので、今回に限らず、お客さまの初期のイメージ集め等にオススメしています。

寝室とLDKをつなげる格子デザインのガラス引戸
3枚引戸には天井に吊下げる上吊タイプ(ハンガーレール式)と呼ばれる設置方法と、和室の襖戸のように敷居と鴨居にはめてスライドさせる敷居タイプがあります。
今回のリフォームでは、普段は戸を閉めて空間を広く使用することが多いというお話でしたので、上吊タイプにしています。
この上吊タイプには、戸をまっすぐ引き出すために床にレールを取り付けて戸の下の駒を走らせるようになっているのですが、このレールにもいくつか種類があって今回は最も薄いタイプのフラッターレールという溝を1本だけ取り付けるという方法を採用しています。
本来は各戸の下にレールを通しますので、3本のレールが必要になりますが、それだと床に仕込まれたレールが目立って見栄えが悪くなりますよね。そこで今回は、それぞれの扉を連動金物という部材で引掛けることにより、1本のレールだけで代用するという案を採用しました。
他にも、マグネットタイプになっているもだと、戸が通るときだけでガイドが飛び出してくるようになっているので、レール自体がなくスッキリしています。しかもこのマグネットタイプですと床に穴を開けるだけなので、施工が簡単にできるというメリットがあります。
ただし、このマグネットが仕込まれている床の部分がレールよりも目立ちますし、戸を引き出すときにガタガタするという2つのデメリットがあるので今回は採用しませんでした。
これが施工した1本レ―ルです。

上吊3枚引戸の薄いタイプのレール

フローリングの色に合わせたアンバー色の上吊引戸のレール
ほとんど目立たない仕上がりになっていると思います。
採用したのはアンバーと呼ばれる焦げ茶色のレール。実はこのレールにもいくつかのメーカーがあるのですが、メーカーによって茶色が微妙に違います。なので、今回のフローリングにはどの茶色が合うのか?をしっかり選定することは、全体の雰囲気やデザインを損なわないためにとても重要なことだったりするんですよね。
かなり細かい部分の話になってしまいましたが、たった一本のレールの色選定を間違えただけで雰囲気が台無しになるデザインもある、というお話でした。。。
2.収納を増設したい
元々のプランにあった既存収納の横に余ったスペースがあったので、そちらにクローゼットを増設したいというご要望です。

マンションのクローゼットの横にできた扉の起動ラインを確保するためのスペース
既存の収納扉は天井まで背の高いサイズオーダータイプの扉です。さらに取手の部分は「J型取手」と呼ばれる加工が施されたもので、オーダーするとかなりの金額と製作時間のかかってしまう扉を採用していました。
「完全に一緒でなくても、同じような見た目になれば大丈夫です」というご要望でしたので、収納扉はJ型取手のメーカー別注品ではなく、建具屋さんで作製する事にしました。
取手の部分は木製無垢材を加工して同色に塗装し、面材の部分は既存の建具と同じ色のメラミン化粧板を採用しました。
そして、観音扉の片側の表側にミラーを設置して姿見として利用できるようにしました。

鏡付き扉を設置した新設クローゼット
3.照明をダウンライト&調光スイッチに取り替えたい
リビングには元々引掛けシーリングが設置されていたのですが、こちらをダウンライトに変更して調光スイッチで明暗のコントロールができるようにしたいとのご要望でした。
ダウンライトには調光タイプと調色タイプというのがあります。明るさ調整するのが調光タイプ、蛍光灯のような白い灯りから電球のようなオレンジ色の灯りに変えられるものを調色タイプと言います。
今回は電球色のみで良いとのことでしたので、調光タイプのダウンライトを設置し、その為の調光スイッチに取り替えました。

引掛けシーリングからダウンライトにリフォームしたリビング
オンオフスイッチから調光スイッチに取り換える場合、信号線を一本配線しないといけない為、スイッチの上部の天井に線を引っ張るための穴をあけて工事をします。

ダウンライトの新設リフォームで配線用に穴をあけて補修した天井の様子
また、マンションにダウンライトを設置するとき、天井の懐(天井裏のスペース)が浅かったり、スラブ(躯体のコンクリート)に直に壁紙を貼った天井だとダウンライトが設置できないことがあります。
一般的なダウンライトは器具の高さが10センチくらいありますので、リフォームでダウンライトを検討している人は、天井裏の有効スペースがあるかどうか確認する必要があります。
リビングの照明器具は引掛けシーリングから配線ダクトに変更して、ペンダントライトを2灯バランス配置しています。

高さを替えてバランス配置したガラスのペンダントライト
4.壁のアクセントにエコカラットを使いたい
元々壁紙仕上だった壁をエコカラット貼に変更しました。

エコカラットに貼り替えたリビングの壁
エコカラットは種類が豊富でアクセントとして効果的です。施工は比較的簡単で、壁紙を貼る内装業者さんでも施工してくれるところがあります。最近は、タイルと区別がつかないような一枚のサイズが大きい種類も選べるようになっており、バリエーションが豊富です。
また、エコカラットには調湿機能がありますので、リビングや寝室はもちろん、洗面所やトイレランドリールーム等に使うと見た目のデザイン要素だけでなく、機能的にもメリットがあります。
リクシルのホームぺージからエコカラットの特設ページを訪れると、専用のシミュレーターページがありますので、そこでいろいろな施工イメージを確かめることができますよ。楽しいので是非試してみて下さい♪
エコカラットシミュレーター公式ぺージ
https://www.ecocarat.jp/simulation/
今回は部分リフォームということで、間仕切り壁の撤去と3枚引戸の設置という内容でした。総額で150万円くらいの工事となり、工期は2週間程度で完了しています。

間仕切り壁を撤去するときに注意する点は2つあります。一つ目は、垂れ壁を残さずに壁全体を壊してしまうと、天井の補修が必要になるという点です。そしてもう一つは、壁を撤去すると部屋全体の床補修をしないといけなくなることがあるという点です。
まずは壁についてですが、壁の下地となる骨組みは壁から作ることが多いので、壁を撤去するとほとんどの場合は壁の手前で天井の下地が切れています。
なので、壁を全部取ってしまうと天井の補修が必要になります。具体的には下地の補強をして壁紙を貼って仕上るのですが、経年劣化によって壁紙が色あせていると部屋全体を貼り替える必要があります。
ちなみに今回は壁の上部を一部残して解体していますので、天井の補修や壁紙の貼替は必要ありませんでした。
これは床についても同じ仕組みになっているので、壁の立っていた部分にはフローリングが貼られていません。(壁の後に床を作っている為)
ですから、この部分だけフローリングを貼る必要があるのですが、部分リフォームの場合、既存のフローリングとまったく同じものを貼らないといけないというのがやっかいなポイントです。
実は新築マンションの場合、別注品を使用していることが結構あるので、既設のフローリングと同じ品番のフローリングを貼ればいいという単純な話で終わらないケースがあります。
特に最近はデベロッパーがデザイン性にこだわった商品企画をしているということもあり、全体のインテリアコーディネートの一環としてオリジナルのフローリングを作っていることがよくあります。
今回リフォームした物件にも、そのオリジナルフローリングが使用されていました。こういう場合はどうすればよいのかというと、お客さまを通じて、デベロッパー、もしくは建築請負業者の保管している補修用フローリングの在庫を一部分けてもらう以外に方法がありません。
この在庫を入手するのが結構大変なんです。今回はうまく担当者と連絡を取ることができ、補修に必要なフローリングが少量だったこともあり分けていただく事が出来ましたが、
入手できなかった時は類似のフローリングを探して代用することになります。
でも、代用品だとおそらく色や柄が微妙に違ってしまうので、どうしても継ぎ目が目立ってしまうんです。
こちらの写真は以前リフォームをご相談いただいたお客さまのご自宅の写真ですが、

一部のフローリングを貼り替えした為色の違いが目立っているリフォーム事例
色だけじゃなく、フローリングの幅も違っていてかなり気になるレべルだと思います。こういう場合も天井と同じく部屋全体のフローリングを貼り替えることになるため、コストも工期も大きくオーバーしてしまいます。
こうなると大事ですよね。。。
ですので新築マンションの部分リフォームで間仕切り壁を撤去するときは、その撤去する範囲の詳細確認が大切です。補修範囲や補修するための建材の入手の可否について等、コストに大きく影響するケースもあるので注意してくださいね。