1.LDKと洋室をつなげて一室にしたい
元の間取りでは、LDKの隣に間仕切り壁で仕切られた洋室があったのですが、この壁を壊して一つの空間として利用したい、というご要望です。
こちらは元の間取り。
LDKと隣接する洋室をつなげて増床するマンションリフォームのプラン
洋室のスペースは寝室として利用するつもりなので、ACのことを考えるとなんとなく仕切れる扉はつけたいが、普段は開けたままにして部屋を広く使いたいということでした。
当初の相談相手であるデベロッパー側の提案は、壁を撤去して3枚引戸を設置するという案です。この案には特に不満はなかったようですが、問題は扉のデザインの方。
メーカーの規格品からの選定だとどうしても納得のいくモノが見つからなかったんだそうです。もちろん、内容と価格については総合的なバランスが求められるため、一度冷静に検討はしてみたそうですが、「トータルでもっと良い解決策があるのでは?」という考えになったようでした。
ここまでのお話をおうかがいして私からは、
「扉はオーダー品で製作してはいかがでしょうか?」
というご提案をしました。
理由は次の通りです。
- 部分リフォームならオーダー製作しても予算内におさえられると考えた為(金額は後述)
- オーダー品にすれば制限なくデザインできる為
- 引戸の場合、オーダーなら床のレールを目立たなくする方法がある為(詳細は後述)
「既製品の場合とオーダー品の場合の御見積書を2つ作成しますので、どちらが良いか総合的に比較してみてください。」
ということで後日御見積書をお渡ししました。
オーダー品と既製品でどのくらい金額に差が出るかと言いますと、およそ3倍くらいです。
具体的には既製品だと15万円くらいで、オーダー品だと45万円くらいになります。今回の場合は既製品といってもサイズオーダーをしているので、いわゆるセミオーダーという部類に入ります。
一週間ほど検討していただき、部分リフォーム全体費用が想定していた予算におさまりそうでしたので、オーダー品の建具を製作する方向でお話を進めさせていただく事になりました。
先ほどオーダー品の場合は商品自体に3倍ほどの金額差があるとお話しましたが、オーダー品は費用以外にも製作の過程でお客さまの労力と時間に負担がかかります。
素材の選定、部材の寸法などの検証には正解がないため、これで良いかどうかの判断が難しいんです。そのため、悩みだすとかなりの時間がかかりますし、精神的なストレスを感じる方もいらっしゃいます。
日中のお仕事が忙しい方などは、かなりの負担になるかもしれません。。。
そこで、大切になってくるのがお客さまとのイメージの共有です。
お客さまが思い描いているデザインに相違ないかどうか、常にこの確認をしながら迅速にデザインを確定し製作を進めていくことがオーダー品のもっとも重要かつ難しいポイントでもあります。
「せっかく作ったのに、思ったより仕上がりが良くなかった」
とならないよう、私の場合はCGパースを積極的に活用しています。CGパースなら図面だけではわかりにくい点もカバーできますし、感覚的な判断がしやすいため、今回のオーダー品のケースでもCGパースで作成したイメージを確認していただきながら進めていきました。
今回作成したCGパースです。
マンションLDKと洋室をつなげるリフォームのイメージパース
図面をみるよりも雰囲気が分かりやすいですよね。
解放感のある扉をご希望されていましたのでデザイン格子のガラス框戸を製作することにしました。
色は既存建具に合わせる方向で決まっていましたので、上下左右の太い枠の部分はメラミン化粧板の近似色、枠も近似色のダイノックシートを選定し、中格子のデザインとガラス素材の選定に入ります。
検証中の格子のピッチを確認したりガラスの組み合わせを検証したりするのには、先ほどのCGパースが便利です。シミュレーションしながら少しずつデザインを進め、最終的には透明のガラスとストライプ柄のモールガラスの2種類を使用しました。
型板ガラスを使ったガラス格子の装飾が施されたオーダー引戸
モールガラスとはストライプのラインが入っている輸入ガラスです。アンティークの家具にもよく使われていおり、家具に使用するとレトロで味のある雰囲気になります。
このストライプの幅には色んなピッチがあります。ピッチによってガラスを通した向こう側の見え方が異なるため、部屋の間仕切り戸として利用する場合、この見え方は結構重要になりますよね。
見え方がどう違うのか?については、メーカーから取り寄せた実物のサンプルで確認していきます。
素材を選定し、サンプルを確認、そしてCGパースで検証。
しっくりくるデザインになるまでこれを繰り返し、ようやく納得のいくカタチが決定するという感じです。オーダー品はこういったプロセスを経て完成していきます。
そしてこの作業の元になるのは、お客様の最初のイメージです。雑誌やインターネットで好きなデザインの写真を探していただくのですが、今回はピンタレストを利用してお客さまの好きなデザインをいくつか選んでいただきました。
ピンタレストはイメージ収集にとても便利なツールです。例えば今回の例だと、検索窓に「ガラスの扉」と入れて検索するとWEB上のガラスの扉の写真をどんどんピックアップ出来るようになっています。これらの写真はカテゴリーを作って保存することもできるので、今回に限らず、お客さまの初期のイメージ集め等にオススメしています。
寝室とLDKをつなげる格子デザインのガラス引戸
3枚引戸には天井に吊下げる上吊タイプ(ハンガーレール式)と呼ばれる設置方法と、和室の襖戸のように敷居と鴨居にはめてスライドさせる敷居タイプがあります。
今回のリフォームでは、普段は戸を閉めて空間を広く使用することが多いというお話でしたので、上吊タイプにしています。
この上吊タイプには、戸をまっすぐ引き出すために床にレールを取り付けて戸の下の駒を走らせるようになっているのですが、このレールにもいくつか種類があって今回は最も薄いタイプのフラッターレールという溝を1本だけ取り付けるという方法を採用しています。
本来は各戸の下にレールを通しますので、3本のレールが必要になりますが、それだと床に仕込まれたレールが目立って見栄えが悪くなりますよね。そこで今回は、それぞれの扉を連動金物という部材で引掛けることにより、1本のレールだけで代用するという案を採用しました。
他にも、マグネットタイプになっているもだと、戸が通るときだけでガイドが飛び出してくるようになっているので、レール自体がなくスッキリしています。しかもこのマグネットタイプですと床に穴を開けるだけなので、施工が簡単にできるというメリットがあります。
ただし、このマグネットが仕込まれている床の部分がレールよりも目立ちますし、戸を引き出すときにガタガタするという2つのデメリットがあるので今回は採用しませんでした。
これが施工した1本レ―ルです。
上吊3枚引戸の薄いタイプのレール
フローリングの色に合わせたアンバー色の上吊引戸のレール
ほとんど目立たない仕上がりになっていると思います。
採用したのはアンバーと呼ばれる焦げ茶色のレール。実はこのレールにもいくつかのメーカーがあるのですが、メーカーによって茶色が微妙に違います。なので、今回のフローリングにはどの茶色が合うのか?をしっかり選定することは、全体の雰囲気やデザインを損なわないためにとても重要なことだったりするんですよね。
かなり細かい部分の話になってしまいましたが、たった一本のレールの色選定を間違えただけで雰囲気が台無しになるデザインもある、というお話でした。。。
2.収納を増設したい
元々のプランにあった既存収納の横に余ったスペースがあったので、そちらにクローゼットを増設したいというご要望です。
マンションのクローゼットの横にできた扉の起動ラインを確保するためのスペース
既存の収納扉は天井まで背の高いサイズオーダータイプの扉です。さらに取手の部分は「J型取手」と呼ばれる加工が施されたもので、オーダーするとかなりの金額と製作時間のかかってしまう扉を採用していました。
「完全に一緒でなくても、同じような見た目になれば大丈夫です」というご要望でしたので、収納扉はJ型取手のメーカー別注品ではなく、建具屋さんで作製する事にしました。
取手の部分は木製無垢材を加工して同色に塗装し、面材の部分は既存の建具と同じ色のメラミン化粧板を採用しました。
そして、観音扉の片側の表側にミラーを設置して姿見として利用できるようにしました。
鏡付き扉を設置した新設クローゼット
3.照明をダウンライト&調光スイッチに取り替えたい
リビングには元々引掛けシーリングが設置されていたのですが、こちらをダウンライトに変更して調光スイッチで明暗のコントロールができるようにしたいとのご要望でした。
ダウンライトには調光タイプと調色タイプというのがあります。明るさ調整するのが調光タイプ、蛍光灯のような白い灯りから電球のようなオレンジ色の灯りに変えられるものを調色タイプと言います。
今回は電球色のみで良いとのことでしたので、調光タイプのダウンライトを設置し、その為の調光スイッチに取り替えました。
引掛けシーリングからダウンライトにリフォームしたリビング
オンオフスイッチから調光スイッチに取り換える場合、信号線を一本配線しないといけない為、スイッチの上部の天井に線を引っ張るための穴をあけて工事をします。
ダウンライトの新設リフォームで配線用に穴をあけて補修した天井の様子
また、マンションにダウンライトを設置するとき、天井の懐(天井裏のスペース)が浅かったり、スラブ(躯体のコンクリート)に直に壁紙を貼った天井だとダウンライトが設置できないことがあります。
一般的なダウンライトは器具の高さが10センチくらいありますので、リフォームでダウンライトを検討している人は、天井裏の有効スペースがあるかどうか確認する必要があります。
リビングの照明器具は引掛けシーリングから配線ダクトに変更して、ペンダントライトを2灯バランス配置しています。
高さを替えてバランス配置したガラスのペンダントライト